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二人の距離は大抵ゼロセンチだ。背中にぴったりくっついて鼻をその肩に寄せる。覗き込んだ先の本に視線を落としている長次は、甘えるこちらを宥めるかのように首を傾けた、ふうわりと髪に触れた長次の温度に心臓が騒いだ。

「ちょーじ」

くすぐったさに促されるように名前を呼ぶ。先程までの行動と同じくらい甘ったるい声になった。ぎゅうと回していた腕に力をこめる。ふっと空気が揺らいだ、長次が笑ったのだ。空気の揺らぎは少しだけ鼓膜を揺らして、あとは甘さを残して消えていく。

「ちょーじ」

もう一度名前を呼んで、それから小さく好きとつけ足した。その言葉は長次の心臓に少しでもこの甘い気持ちを届けてくれるだろうか。長次の指先がその身体を拘束しているこちらの腕に触れて、そうして温かな体温と少しだけ空気を揺らす長次の微笑みだけが今この世界のすべてだった。

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『ストロベリイ・クライ』



先生の唇は少しかさついていて、それから温かかった。貪るとは真逆の口づけをした先生は、こちらの顔を困ったように見る。その顔がかすんでしまったのは先ほどの口づけのせいでこらえていたはずの涙がぽろりと落ちてしまったからだ。

「やはりやめておくか」

そういって先生のよく馴染んだ右手が涙の跡をたどる。―たぶん先生は全く違う意味でこの涙をとっている。先生の指先はいつもよりも冷たい、頬に触れる指先が冷たさのせいなのか、それとも別の要因なのか震えていて、そうしてすぐにでも離れてしまいそうで、慌ててその手を取る。驚いたような先生の顔に、ちがうと首を振る、もう耐えきれなくなった嗚咽のせいでうまくしゃべれなかったから、こちらの涙をぬぐった指先に口づける。涙のしょっぱさと、それからどこからか広がる甘さと。

「いやじゃないです」

木下先生になら、嫌われる以外のことされたって痛くもかゆくもないです。
そう言葉を紡ぐ。はぁと大きくため息を吐いた先生の頬がうっすらと赤く染まっているのも涙のせいでぼやけているのが少しだけ悔しい。


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title by サディスティックアップル

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　切りすぎた前髪が気になるから俯き気味に歩く。どうして自分で切ろうだなんてバカなことを思ったんだろう、今更そう後悔を始めたって遅いのだけれど。何度となく上げる視線の先はいつもよりも広くて落ち着かない。

「伊作？」

　生返事ばかりを繰り返すこちらに留三郎の不審げな声。慌てて顔をそらして前髪を隠すように手をやったのは、留三郎にはかっこ悪くて見せたくないからだ。女の子じゃないんだから、と思うけれど、それでも好きな人の前ではいい恰好をしていたい。―まぁ、落とし穴に落ちたり鳥の糞を落とされたり、いいところを見せられた試しはないのだけれど。
　慌てた様子のこちらに余計に興味をそそられたらしい留三郎は「なんだよ」と笑いながら前髪をかばう右手をどけた。触られると力が抜けてしまうだなんて、やっぱりかっこいいところは見せられてない。

「前髪切りすぎたのか」

　明らかになってしまった切りすぎた前髪に、笑うでもなく留三郎の指先が前髪をいじる。じっと下から睨むようにその顔を見ると、嫌味なく笑った留三郎が「この方が見つめあいやすいな」なんてバカなことを言うものだからどんな顔をしていいのかわからなくなった。


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シャッター/aiko

この曲で食伊を考えてたらぶわあああしました。ちょっと歌詞の一部切り取りで明るめにしてみましたが切ないっぽい話も書きたいなぁ。
あと同じくまとめⅠの蝶々結び→be master of lifeの流れはちょこへすぎてなにか書きたくてうずうずしっぱなしです。
「誰が何を言おうと関係ない　あたしは味方よ」とか「波立つ未来にもあなたとなら前進あるのみで大丈夫」とかちょこへで考えるとぐるんぐるんして仕方ない・・・！！