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開け放した窓から生ぬるい風が入ってきて、クーラーの効きすぎた部屋の空気をしけらせた。冷え切った肌に生ぬるさは妙に心地よくて、ため息を一つつく。冬の間竹谷を待つために見上げていた空は、だいぶ様変わりしていて、星座の名前もわからない。―どちらにしても梅雨という季節ではほとんどの日が曇りで、星なんて数えるほども見えないのだけれど。
七夕のために飾られた商店街をあざ笑うかのように、空には街灯や街の明かりで白い雲が薄ぼんやりと照らされていた。

「へーすけ？」

クーラー効かせてんのに窓開けるのか？といつの間にか風呂からあがってきたらしい竹谷がひょい、とこちらの背中の上から窓の外へと顔を突き出す。おぉ、くもってんなぁ、七夕なのに。といった竹谷は、こちらのおでこを指でちょん、とつつくとほら窓しめんぞーと言って思い切りよく外気を遮断した。

「兵助はなんかお願い事書いたのか？」

かぎまで閉めて振り返った竹谷の問いにふるふると首を横に振る。とすん、とこちらの横に腰掛けた竹谷の風呂上りの熱さに少しだけ離れて、それから一言だけ「だって星に叶えてもらうようなことないし」と言った。

「じゃあ誰に叶えてもらうんだよ」
「―はち」

間髪いれずに答えると一瞬驚いた顔をした竹谷は、すぐに苦笑を洩らした。俺、スーパーマンじゃねぇぞというからしってる、と答えた。

「望みはなんだよ」

呆れたように言う、だけどいやそうじゃない竹谷の声音に夏の星座を教えて、という。え、なんで？という問いには答えないでだめ？と聞くと、それくらいならべつにいいけど、と言われたからなぜだかとてもうれしくなって竹谷の風呂上りの体温にそっと身を寄せた。


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文章にあげてる「星をなぞる指先」が冬の星座の話だったので兵助君には夏の星座も知ってもらおうと思いました、まる

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ひどい、とかずるい、とか勘右衛門はいつだってそうこちらのことを表現する。泣きそうな顔で、いつも。それでも少したつと出会った最初のころ、そう彼がまだほんの腰くらいまでだったときだ、そのころ見たいに笑う、笑う、笑って、あのころよりも少し低くなった声で「先生」と呼ぶのだ。
その瞬間ずきり、と痛む心臓をきっと一生教えることなどないのだろうけれど。

恋なんて、しないと思っていた。
忍になってからずっとずっと、そう思って生活してきた。
それなのに、

それなのにまさか教え子相手に心臓の痛みを覚える日など、来るとは思いもしなかった。「先生、好きです」と泣きそうな顔で笑うあの子に答えてあげる日は来るわけもないから、この手でその頭を撫でることすらかなわないだなんて、当たり前のことが辛くて辛くてどうしようもない日が来るだなんて、思ってもいなかったのだ。


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世界で一番近くに居るのに/samfree

触れると伝わってしまいそうだから、触れることをためらう。
きっと木下先生は若いころ好きになった人がいるんだけれど、その人はくのいちとかで忍は恋をしないってことをきつく言われてきて、あきらめてあきらめて、そうして今に至るんだけれど勘ちゃんと出会って、最初は生徒を見る教師の目というか、育て親の目みたいなので見てるんだけど、ある瞬間「あれ？特別じゃないか？」と気がついて自問自答スタート。
みたいなことを延々と考えてました。木→←勘もありだと思います。

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「はち」

名前を呼ぶと柔らかに頭を撫でられたからくすぐったくなって、顔を伏せた。はちはとてもとても俺に甘い。綿菓子みたいだ、とふと漏らしたら、じゃあ舐めると溶けちゃうかもな、なんて冗談めかして笑う、その顔までかっこいいだなんて、もう本当にどうかしている。

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（どうかしているのは誰なのか）