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緩やかに息を吐きだす、それはとても久しぶりの行為に思えた。ぎすぎすと痛みを訴える喉は、泣きすぎたせいだろうか。閉め切っていなかった障子の隙間から見える青空と、色にすればきっとそっくりの青になるだろうけれど、部屋を満たしている空気はあの青空ほど清々しくはないのだ。
目に痛いほどの青空に障子を閉めなければと思うのに、身体は動かなかった。そのどこかに、見知った姿を探そうとしている自分に気づかずにはいられない。この青空の下にいるのは確かで、だからもしかしたら、
「……っ」
淡い期待に押されるように名前を呼ぼうとして、だけれど掠れた声は何も言えなかった。
もう、呼んだって留三郎はいないのだ。この声が、留三郎に届くことはない。その事実がまたじんわりと世界をゆがませていくのがわかった。きんきんと痛みを訴える指先は、握りしめていたせいで色がなくなっている。
いつかこうなることくらいわかっていたはずなのに、覚悟だってちゃんと決めていたはずなのに、いざ別れの時が来ると信じられないくらい脆い心は、簡単にぼろぼろと音を立てて崩れた。それでも大粒の涙を流したのは、留三郎が障子をあけて、青空の下に出ていってしまってからなのだから褒められるべきではないかと思う。
この青空がオレンジに、そうして藍色に塗りつぶされてしまえば、自分も動き出すことができるのだろうか――そんなこと、できる気がしないのだけれど。


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透き通る青に君を探す/GUMI
久々にボカロ曲から！





悲しい気持ちや、やりきれない気持ちや、吐き出せないことや、とにかくぐるぐるしてまとまらない時は文章を書けばいい。私にはそれしかのこされていないのだから。

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留三郎の頬に触れるのが好きだ。なめらかな頬を滑る指先がとても尊いものに思える。そういうときっと留三郎は笑うんだろうなと思うから、いわないけれど、それくらい留三郎は僕にとって、大切な人なのだ。触れるだけで心臓がはねて、嬉しくなって、泣きたくなって、そんなのきっと、留三郎以外にいない。

「おい、伊作？」

考えごとをしていたせいで止まってしまった指先をくすぐったく思ったのか、留三郎は頬に残ったままのこちらの指先をそっと留三郎自身の指でなぞりながら、笑い声を落とすみたいに名前を呼んでくる。
呆れたような視線に、もしかしたらこちらの考えなんてお見通しなのかもしれない。そう考えると何かおかしくて、笑ってしまいたくなった。だけど笑うよりも何よりも先に「好き」の言葉が口から滑り落ちたのだけれど。

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うとうととしてしまうのは、少し弱まった日差しに照らされた縁側が気持ちいからだけじゃなくて、陽だまりみたいな体温がすぐそばにあるからだ。雷蔵は緩やかにこちらの髪の毛を梳きながら、もう片方の手で器用に忍たまの友をめくっている。その内容が頭に入っているのかどうかはわからないけれど、時折微妙なタイミングでめくりにくそうにページがめくられていく。
「雷蔵」
その視線すらほしくて、名前を呼んだ。片手なんかじゃ足りないのだ。わがままかもしれないけれど、雷蔵が、こんなに近くにいるのに雷蔵が足りない。雷蔵はこちらの意図をくんでくれたのか、それともめくりにくさに文脈を追うのを諦めただけなのか、ちらりとこちらに視線を向けてくれた。
視線がぶつかれば、自然と心拍数が上がる。
「なぁに、三郎」
その声がこちらの名前を紡げば、もう眠気なんていつの間にか吹っ飛んでいて、その身体を抱きしめたくなる。欲望に忠実な身体はそう思った瞬間には勢いよく起きあがっていて、「え？」とこぼれた雷蔵の不思議そうな声ごとぎゅっと抱きしめていた。