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そっと見上げると長次の視線は忍たまの友にしっかりと落ちていて、こちらのそれには気が付いていないようだった。さらりと長次の髪の毛が零れ落ちて、そのせいであけっぱなしの部屋の障子から入ってくる西日がきらきらと散る。こうして向かい合って忍たまの友とにらめっこしてどのくらいの時間が経っただろう。まぁ、その文字とにらめっこしているのは長次だけで、自分はさっぱりはいってこない文章に飽きて一頁につき少なくとも3度は長次のその、ひたむきな視線を盗み見ているのだけれど。
はぁ、と聞こえないようにため息をつく。ぱらりと頁をめくる指先がひどくきれいでなぜか心臓が大きく跳ねた。―聞こえるはずがないのに、長次の視線がふとこちらを見る。うっかりとそらし損ねた視線が絡まって、先ほどよりも高鳴る心臓が誤魔化すように視線を下ろすことすらも邪魔をする。

「小平太、集中しろ」

お前が見るのは私ではなく、文字だろう。そういって先ほどまで頁を触っていた指先がこちらの額に触れる。すぐ離れていった指先の温度も、盗み見ていことがばれていたことも騒ぎ始めた心臓を加速させるには十分だ。だけど余計に集中できるわけない、と怒ったところできっと長次の思うつぼなのだ、悔しい。


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あれ、これきゅんきゅんしないですね、すいません・・・(´・ω・｀)

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ちりっとした痛みを首筋に感じて、ぎろりとその主を睨んだ。全く悪気なさそうな視線でこちらの咎める視線を受け止めた竹谷は、その赤い舌でぺろりとひとなめ。じわりと感じる痛みはどうやら竹谷の歯がこちらの首筋を傷つけたらしいことを表していた。

「はち、」

痛い。そう抗議してみるけれど、その言葉がけして竹谷を止めないことを知っている。裏表なく明るい太陽のようでいて、その実、竹谷の裏側は見通せないくらい暗いのではないかと思わせるときがある。そうしてその闇を見ることができるのが、竹谷が見せても構わないと思っている相手が、少なくともこの学園において自分だけなのだとしたら、身の内に沸いてくるのはただ嬉しさだけなのだ。

「兵助」

どこか縋る響きで竹谷がこちらの名前を呼ぶ。首筋に柔らかく触れた唇がひどくいとおしい。


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どうしようもなく執着しているのは本当はどっち？

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こちらよりか幾分か白い手首に口づけた。甘くも苦くもない、だけど身体じゅうに染み付いてしまっているらしく薬の匂いが微かにつんと鼻をかすめる。ちりっと痛みを感じる程度に歯を立てると伊作の口から「はっ・・・」と声が漏れた。手首を責める唇は離さずにちらりと顔を見る。視線が合うと「ばかじゃないの」と辛辣な言葉が降ってきたけれど、そんな真っ赤な顔で言ったってむしろ逆効果だということを知っているのだろうか。
ちゅっとわざとらしい音を立てて手首に赤い痕を残す。ざわりと揺れたのは自分の中の欲だけじゃないことは、伊作の瞳がくるりと動いたことであきらかだった。


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食満食満しく食満！