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　眠気はすぐそこまで迫ってきているのにどうしてだか寝付けない。そんな夜は最近よく訪れた。同じ布団で寝ていたはずの竹谷はいつの間にか布団から転がり落ちていて、だけど掛け布団を奪っていくなんてことはしないらしい。この寒いのにむき出しになった脚を見て、くすりと笑いを落とす。
　その中に少しだけ自嘲がこもっていることに気がつかないわけはなかった。竹谷が離れていってしまったのがさみしくて寝れないだなんてどうかしている。部屋すら離れて寝る夜だってあるのに、一緒の布団に入って寝るとどうしてこんなにも竹谷が少し離れるだけでもさみしくなってしまうのか。忍者として失格じゃないかと自問自答するけれど、だけど、つんとしてきた心臓の痛みを止めるには至らなかった。

「はち、はち」

　また布団から落ちてる。寒いから布団はかぶりっぱなしで芋虫みたいに竹谷に近寄ってその肩を揺らした。「んー」と薄く目を開けた竹谷はこちらの姿を認識したのだろう、にっこりと笑った。

「風邪ひくぞ」

　だから起きて。そういうのになぜか竹谷はぎゅっとこちらの腰を抱いてその胸に引き寄せてきた。「おれがはなれると、さみしい？」だなんてわかってやってるんだったら殴ってやろうかと思ったけれど、抱きしめられた姿勢ではそれもかなわないので、素直に頷いてみることにした。

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『神様の背中』


　その背中に触れることがどれだけ勇気のいることか、先生は知らないだろう。先生はいつだって簡単にこちらの頭に触れて、笑うから。ゆっくりとゆっくりと手を伸ばして、その間祈ることはどうか振りかえらないでということだ。もし先生が振り返ったら自分はこの手を引っ込めなければいけない。

「なんだ、勘右衛門」

　先生の声が無慈悲に響いた。ぴくりと手の動きを止める。「気配がダダもれだ」なんて言われなくたって気がついているのだ。気がついているのにどうしようもできないって、先生にはわからないのだろうか。

「―なんでもないです」

　つんとした痛みが心臓をかけぬけるから慌てて顔を伏せた。先生の背中が視界から消える。代わりにその背中に触れられなかった指先が目に入るとついに堪え切れなくなってぼとんと涙が一粒落ちた。先生はずるいです。何度も言ってきた言葉を、だけど、いま、口に出すことを出来ない。


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title by 星が水没
イエス、雰囲気文章！

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『目覚められないモーニング・コール』


　朝の光にせかされるように瞼をそっと押し上げた。冬の朝の、弱い光。それでも寝起きの目には眩しくて何度か瞬かせる。目の前ではまだ薄い瞼をぴったりくっつけて伊作が気持ちよさそうに寝息を立てている。

「おい、伊作、朝」

　いつもよりかすれた声でそう呼びかける。布団の端から覗く、妙に肌蹴た白い肌に赤い印。そこを触りたい衝動にかられたけれど「ん」と伊作が小さく呻くのが聞こえたから、伸ばした手は中途半端に止まった。ゆっくりと、ひどく緩慢な動作でその瞳を光の元にすべてさらした伊作は、「もうちょっと寝ようよ」とこちらの首筋に頭を押し付けてきた。


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title by 遠吠え

あ、あの、もしよかったらリクエストもお受けしてますので！
短文ですが、このカップリングもっと書いてよーってのありましたら。